I
(1)五十音図タ行第三段の仮名。 歯茎破擦音の無声子音と後舌の狭母音とから成る音節。
(2)促音(つまる音)を表す仮名。 促音の場合, 現代仮名遣いではなるべく小書きにするとされている。
(3)平仮名「つ」, 片仮名「ツ」は, ともに「州」の略体あるいは「川」の全画からか。
II
(並立助)
〔完了の助動詞「つ」の終止形の用法から〕
動詞の連用形に付き, 「…つ…つ」のように, 「つ」を二つ重ねて用いられる。
(1)(「…つ…つ」の後にサ変動詞「する」を伴って)継続的に繰り返される二つの動作・作用を並べあげるのに用いる。 …たり…たりする。

「家の前を行き~戻り~する」

(2)(「…つ…つ」の後に「する」以外の動詞がきて)下にくる動詞の表す動作・作用の連用修飾語として, 二つの動作・作用を並べあげるのに用いる。

「しばらくはため~すがめ~, それを見ていた」「見え~隠れ~, ずっと後をつけて行った」

III
(副助)
〔くだけた言い方の話し言葉に用いられる。 「っつ」の形でも用いられる〕
数量を表す語に付いて, 同じ割合であることを表す。 ずつ。

「百円~与える」「みかんを二つっ~くばる」

IV
(助動)
完了の助動詞。 下二段型活用。 用言および助動詞「る」「らる」「す」「さす」「しむ」などの連用形に接続する。
(1)動作・作用が完了すること。 また, すでに完了してしまったことを表す。 …た。 …てしまう。 …てしまった。

「我も見〈つ〉人にも告げむ勝鹿の真間の手児名が奥つき処/万葉 432」「死にければ, 陣の外に引き棄て〈つ〉/枕草子 9」

(2)ある事柄が実現することを確信をもって述べるのに用いる。 たしかに…する。 きっと…する。

「冬は雪をあはれぶ。 積もり消ゆるさま罪障にたとへ〈つ〉べし/方丈記」「この事かの事怠らず成じ〈て〉ん/徒然241」

(3)ある事実に対する確認の気持ちを表す。 …た。

「真木柱太き心はありしかどこの我(ア)が心鎮めかね〈つ〉も/万葉 190」

(4)(「…つ…つ」の形で)二つの動作・作用が同時にまたは継起して行われることを表す。 …たり…たりする。

「僧都, 乗つてはおり〈つ〉, おりてはのつ〈つ〉, あらまし事をぞし給ひける/平家 3」「組ん〈づ〉組まれ〈つ〉, 討ち〈つ〉討たれ〈つ〉, 敵も御方(ミカタ)も隙のなきこそおもしろけれ/盛衰記22」

〔(1)語源は, 動詞「うつ(棄つ)」の「う」が脱落したものかという。 (2)完了の助動詞「ぬ」とほぼ同じ意味・用法であるが, 「つ」と「ぬ」との間には, 次のような差異がみられる。 (a)「つ」は他動詞に, 「ぬ」は自動詞に付くことが多い。 (b)「つ」は有意的動作を, 「ぬ」は自然的作用を表す。 (3)(4)の「…つ…つ」の用法は中世以降発達したもの。 現代語では用法が固定化し, 並立助詞として扱われる〕
→ つ(並立助)
V
(格助)
体言または体言に準ずるものに付いて, 連体修飾語をつくる。 の。

「沖~鳥/古事記(上)」「上~瀬/万葉 3907」「遠~神祖(カムオヤ)/万葉 4096」

〔上代の語。 ただし, 上代でも用法はやや固定化しており, 中古以降は「夕つ方」「まつげ」など, 複合語中に残存形をとどめるだけになる〕
VI
つ【個・箇】
助数詞。 和語の数詞に付いて, 物の数を数えるのに用いる。 年齢を表すこともある。

「一~」「二~多い」「三~になった」

〔現在では, 「ひと(一)」から「ここの(九)」までの数詞に付くだけであるが, 古くは, 「もも(百)」「いお(五百)」などにも付いた〕
VII
つ【唾】
つば。 つばき。 唾液。

「~ガ口ニタマル/日葡」

~を引・く
酸っぱい物を目の前にして, 口の中につばがわく。 よだれを垂らして物を欲しがる。
VIII
つ【津】
(1)海岸・河岸の船舶が来着する所。 船つき場。 渡し場。 港。
(2)特に, 船つき場や渡し場に対して, 物資が集散し, 集落が形成された所。 港町。
IX
つ【津】
三重県中部の市。 県庁所在地。 伊勢湾に臨み, 古く, 安濃津(アノツ)といい, 三津(サンシン)の一。 近世は藤堂氏の城下町。 伊勢平野の商工業の中心。 専修(センジユ)寺がある。

Japanese explanatory dictionaries. 2013.

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